性病事典 l(C)泌尿器科専門医・指導医 澤村正之
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性病事典トップページ疾患別解説(淋病)尿道炎治療のNG特集

■ 尿道炎治療のNG特集
 著者のもとには「ほかで尿道炎と診断されて治療を受けているがなかなか治らない」といって訪れる患者様が毎日一人か二人はいらっしゃいます。ほとんどの場合は患者様の思い過ごしで診断も処方も正しいので、「もとの先生に通院してください」と申し上げています。しかし中にはとんでもない処方をされていることもあります。そんなNG特集を掲載いたしました。このページは患者様の健康被害をなくしたいという願いから書いております。個々の事例で主治医の判断による場合もございますので、特定の医療機関を中傷する意図はございません。

その1 淋菌とクラミジアにクラビット(100mg)3錠x7日間


 クラビットはニューキノロン系抗菌剤の代表的なお薬で、広い抗菌作用を有し,副作用も少なくて、非常に使いやすい薬です。淋菌とクラミジアに適応を認可されていますので、「これを飲めば淋病とクラミジアが同時に治せる」と説明するドクターもかつてはいらっしゃいました。しかし、クラビットに対して耐性を持つ耐性淋菌ができてしまい、臨床的には推奨できない状態です。クラミジアに対しても、通常の1日投与量300mgでは効きが悪い印象があります。著者はクラミジアの治療の場合には400mgから600mgの投与を行いますが、薬価も高くなりますし、健康保険では認められづらい投与方法になりますので、あまりお勧めはしていません。

その2 淋菌とクラミジアにミノマイシン 150mg/日 

 ミノマイシンも淋菌とクラミジアの両方に適応を許可されたお薬です。値段も安くて広く使われています。しかし淋菌の耐性率は80%にも上るので、あまり効果は期待できません。クラミジアに対しては日本性感染症学会のガイドラインにも載っており、効果が期待できます。ただし、著者は経験上成人男性には1日300mg投与することをお勧めしています。1日量200mgの処方でなかなか治らなかった症例を多数経験しているからです。ただし、ミノマイシンで強いめまいを起こすことがありますから、ほかに有効で安全な治療薬がある以上最初からミノマイシンを処方することはお勧めいたしません。

 ましてやそれ以下の150mg/日とか、100mg/日の処方された患者様をときどき拝見いたしますが、このようなこども向けの投与量では治せる病気も治せるはずがありません。尿道炎はたとえ不十分な治療をしていても自覚症状が消えてしまいますから、このような半端な治療でも症状が消えて、直ったと誤解していると、菌が体の奥に侵入してしまい、大変な後遺症を引き起こす原因になります。このような処方はNGどころか、医療過誤です。

 ミノマイシンには、ジェネリック薬品といって安価なものが市場に出ていますが、メーカーによって吸収率にばらつきがあり、効果も一定していません。オリジナルのレダリー社のものをお勧めいたします。

その3 クラミジアに小児用クラリスロマイシン(50mg)3錠x7日間
 
この処方も時々見かけます。大正富山薬品の「クラリス」とダイナボットの「クラリシッド」がこれに当てはまります。クラリスは日本で開発されてクラミジアに対する効果はほかの抗生物質より優れていますので、世界中で使用されています。ただし、その薬でさえ、成人の1日用量は400mgです。肝機能や腎機能がよほど悪い患者様でない限り小児用の50mgを処方することはありません。

その4 淋菌とクラミジアにシプロキサン・バクシダール

 これらの薬はニューキノロン系抗菌薬の元祖とも呼べる歴史のあるお薬で、ずいぶんと感染症の治療に役立ちました。いずれも淋菌への保険適応が認められていますが、今では耐性化がすすんでこれらの薬はほとんど効かなくなってしまっています。クラミジアに対してはもともと保険適応すらありませんが、いまでも風邪などでよく使われるので、尿道炎にもいまだにこれらの処方をされることがあります。
その5 ジスロマック 500mgx1〜3日間


 ジスロマックは、1000mgを1回(1日分)だけ服用すると、7日間から10日間の血中濃度が持続され、毎日薬を飲む必要がない大変便利なお薬です。クラミジアに対する効果も安定していて、著者もよく処方いたします。しかし、上気道炎の処方は500mgx3日となっており、このような使い方ではクラミジアに対する有効な組織内濃度が維持できません。

 また、このお薬は淋菌に対しても有効性がありますが、日本では保険適応が認められていませんので、淋菌の治療には使いません。欧米では淋菌にも適応が通っていてよく使われていますが、2000mg単回投与(日本の倍量)を使っていますので、欧米の成績をそのまま日本に当てはめるわけには行きません。

 「これを1回飲めば必ず治るからもう来なくてもいい」と宣言されるドクターがいらっしゃるようですが、著者にはそのような勇気はありません。
メーカーのデータではジスロマック1000mgの単回投与でクラミジアの除菌率90%となっていますが、実際の臨床では、単回投与だけで尿道分泌物まできれいに治る人は6割ほどです。尿道炎ではクラミジアばかりではなく、そのほかの菌も混合感染していることが多いために、このような結果になっているものと推測します。

その6 クラミジアと淋菌にセフェム系抗生物質

 適応もないのにまさかと思われるでしょうけれども、意外に多いNG処方です。セフェム系抗生物質はクラミジアには効きません。淋菌にもセフスパンなど、ごく一部のセフェムは有効なこともありますが、たいていは耐性化が進んでいます。淋菌の治療は注射薬が主体です。アレルギー体質など、特殊な場合を除いては尿道炎に(淋菌に対するセフスパンを除いて)セフェムを使うことは考えられません。

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<CONTENTS>
知ってても損はない淋病のウンチク
 淋病の歴史
 淋菌の仲間たち
 耐性淋菌はどうやってできるのか 
淋病の顕微鏡検査(最新は最良か?)
淋病治療の大原則
尿道炎治療のNG特集
   
クラミジアの症状(男女比較)
クラミジアで起こる病気 
クラミジアの治療に時間がかかる理由  オススメ
 クラミジアの治療原則
淋菌とクラミジアが合併するときの治療方針
クラミジア検査結果の読み方  オススメ
尿道炎の臨床的分類(提案)
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