クラミジアの症状

典型的なクラミジア性尿道炎の場合、感染してから1週間ぐらいたってから尿道先端がムズムズしてきて、徐々に痛みに変わって行きます。特におしっこがしみるとか,痛みを伴うことが多いです。尿道分泌物(ウミ)は、淋病ほど多くなく、透明〜若干白く濁った程度の 水っぽい傾向があります。淋病と比べると「鼻水」のようにさらさらしていることから漿液性分泌物と呼んでいます。
ただし、上記は典型的な症状ですから、潜伏期間はひとによってまちまちで、まったく自覚症状がないものから、おしっこするのが怖いほど痛くてたまらないものまで様々です。感染して数日で自覚症状が消えてしまうこともあるので、感染したことに気づか ない人(無症候性感染者)が半数以上に及びます。感染しているひとと性行為があっても、必ずしも100%うつされる訳ではありませんが,オーラルセックスからでもうつる確率は非常に高いので,もしも性的パートナーが、明らかにクラミジア感染していれば、ご本人も感染していると考えて、対処するべきです。なぜならば、検査をするときの条件によって検査が失敗してしまうことがよくあるから、「検査結果を待ってから治療する」のではなくて,「状況判断で治療を開始する」べきだと考えられるからです。

「クラミジアとはどんな細菌か?」を知ることで、検査と治療の方法を理解しやすくなります。

ヒトに病原性を持つクラミジアはオウム病クラミジア(Chlamydia pusittaci)、肺炎クラミジア(C. pneumoniae)、トラコーマクラミジア(C. trachomatis)の3種類があり、細菌学的にはC. pusittaciC. pneumoniae はChlamydophila属に分類され、C. trachomatisChlamydia属 に分類されます。クラミジアは、自ら繁殖するためのエネルギーを作ることができないので、人間の粘膜細胞の中に寄生して繁殖します。細胞内で十分に繁殖すると、その細胞を破って外に出て感染をさらに広めます。このように大変ユニークな細菌学的特性を持つために、分離培養が困難で、一般的な細菌と異なり感受性試験等で薬剤の効果を評価するこ とは難しいため、しばしば見逃されたり不十分な治療によって感染が遷延化して重大な健康被害をもたらす一因になっています。

クラミジアの検査

クラミジアは発育速度が遅くて,人間の細胞の中でしか育ちませんから,一般的な細菌培養検査で検出することができません。そこで、死んだ菌の核酸を検出するのですが、尿や分泌物中に放出されている細菌数は、実際感染している数のごく一部に過ぎないので,採取したの一部をコピーして検出感度を上げる技術が用いられます(核酸増幅法)。その代表的な方法がPCR法とSDA法です。その他いろいろな方法がありますが、当院では精度と感度が安定しているのでこの二つの方法を採用しています。検査方法別の感度比較は、「性病事典/専門医向け記事」にあります。

クラミジアの治療

一昔前に「淋菌とクラミジアの療法に有効」として、クラビットやシプロキサン、ミノマイシン等が使われていました。しかし、これらは淋菌とクラミジアのどちらにも効果が期待できません。クラミジアはたとえ治療が間違えていても1~2週間ぐらいで自覚症状が消えてしまうことが多いので,もう15年も前になりますが,クラビットの製造メーカーに呼ばれて講演会を行ったとき,「クラビットは淋菌には無効なので、どちらにも効くと言うセールストークは使わないように」「クラミジアにも効きが悪くなっているので、常用量(当時300mg/日)の1.5倍~2倍必要だ」と警告しました。その後研究が進み,現在では500mg/日の服用がスタンダードになっています。また,現在ではクラビットを改良して少ない量でも高い効果が期待できる薬(グレースビット)も出ています。ただし、有効な薬も昔のように乱用したり、過剰投与したり、むやみに長期間使うべきではありません。 クラミジアの細菌学的特性を考えると,クラミジアに有効な治療薬は、①細胞内に移行しやすい薬であること ②長期間にわたって作用し続ける薬であること ③クラミジアのDNAレベルで有効な薬 でなければなりません。その条件を満たす薬は限られてしまい、しかも健康保険の範囲内で使える薬はごくごく少なくなってしまいます。

ジスロマックは、2000mgの超大量を1回だけ飲めば約90%の感染が治るとされており、海外では非常に多く使われています,日本でもよく使われるようになりました。またジスロマックは胎児に影響しないとされているので、妊婦にも使用が許されています。なぜ1回だけ飲めばいいのかというと、この薬は腸から血液に入ると、白血球に取り込まれた形で1〜2週間体内を循環して,クラミジア感染細胞ちかくで放散されます。そのために、できるだけ大量の薬を1度に体内に入れなければならないわけで、500mgを3日間連続とか、1000mg1回とか、中途半端な量を続けて飲ませても効果が出ません。ジスロマックは連鎖球菌や腸球菌,マイコプラズマの一部に耐性を持つものがあり,年々その割合が増えていて,海外ではジスロマック一辺倒の治療を見直す意見も出てきています。当院ではもちろんジスロマックを処方することもできますが、臨床データに基づき、最初に第4世代フルオロキノロン(グレースビット100mg)を1週間使い,2回目にジスロマック,またはクラリスといったマクロライド系抗菌薬を使い、合計2週間の投薬治療を推奨しています。その理由は,フルオロキノロンとマクロライドでは作用の仕方が全く異なるから、2種類の薬を使ってより確実にクラミジアを消滅させる必要があると考えるからです。

 

詳しくは性病事典をご覧いただくか、拙著Sysmex社「STI Up to Date シリーズ第2巻 クラミジア感染症」2011年発行 および、日本臨床別冊「腎臓症候群(下)7. 感染症 7)クラミジア感染症」20123月出版 に記載しています。

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