クラミジア感染症について執筆しました

投稿日:2011年9月2日|カテゴリ:医療情報

日本臨床2012年3月号別冊「腎臓病症候群」下巻の「感染症:クラミジア感染症」の執筆を担当いたしました。腎臓疾患とクラミジア感染症の関連を解説しています。おもに血液透析や腎臓移植を手がける専門医向けの企画です。
なお、尿道炎を引き起こすクラミジア・トラコマティスは、動脈硬化との関連はありませんので誤解のなきよう、お願いいたします。

肺炎クラミジアの感染が、動脈硬化の原因になるという学説が1988年にフィンランドからだされて,1990年代に世界中で研究が盛んに行われました。すでに心筋梗塞の既往歴がある患者にジスロマックを投与してその後の心血管イベントの二次予防を検討した大規模な研究(WIZARD研究)では、肺炎クラミジアと動脈硬化の関連ははっきりしないという結論が出されてしまいました。しかし、2000年代に入ってからも血液透析や腎移植患者においては肺炎クラミジア感染が動脈硬化の危険因子になり得るという研究が相次いで発表されており,非常に興味深いです。本編では肺炎クラミジア治療が動脈硬化二次予防には無効であったとしたWIZARD研究に関して、細部までもう一度よく読み直して,予防的治療の可能性に付いて述べています。

まだ出版前なのでさわりの部分だけ引用します。
——————————————————-

はじめに

ヒトに病原性を持つクラミジアはオウム病クラミジア(Chlamydia.pusittaci)、肺炎クラミジア(C. pneumoniae)、トラコーマクラミジア(C. trachomatis)の3種類があり、細菌学的にはC. pusittaciC. pneumoniae はChlamydophila属に分類され、C. trachomatisChlamydia属に分類される。クラミジア感染症と腎臓疾患との関連は、従来免疫力が低下しがちな慢性腎不全や移植後の患者における呼吸器感染症への注意にとどまっていたが、近年Chlamydia pneumoniae(CP)感染が動脈硬化の発症に関与する可能性が指摘され、末期腎疾患(End-stage renal disease: ESRD)患者の心血管イベントやシャント開存などの総合的な予後に関わる危険因子として注目されている1−4)