ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がん予防ワクチンの基本的知識
HPVは、皮膚や粘膜の基底細胞に侵入して,細胞の異常増殖をおこして腫瘍を形成しますから、細胞分裂をしていない角質層に感染しても発病しません。に感染しているひとが多くても発病するひとが少ないのはこのためです。
また、細胞内に感染しているので血液と触れることがないので,自然の状態で免疫ができない、今までワクチンが作れなかったのもこのためです。
はカプシドと呼ばれる正20面体の殻を持ち,その中に遺伝子を格納しています。電子顕微鏡でカプシドの構造を解析して,人工的にタンパク質でカプシドを再現して,遺伝子情報を持たない中身が空っぽな偽カプシドがHPVワクチンです。
自然界ではもともと抗体が作られなかったので、偽カプシド(ワクチン)を投与しても、なかなか抗体が作られませんでした。免疫にワクチンを認識させるための介助役となるのがアジュバントです。ワクチンの性能はアジュバントによって大きく左右されます。
偽カプシドといい,アジュバントといい、ひとむかし前の医学の常識をはるかに超えた発明なので、医者の間でもなかなか理解できないでいるひともいるみたいです。
ワクチンの実力と定期的ながん検診の必要性
ワクチンのターゲットは16、18型HPVですから、原則的には他の型には効きません。つまりワクチンの予防効果は子宮頸がんの原因ウイルスのうち16、18型が何%なのかということで決まります。理論上今のワクチンの予防効果は最大でも70%どまりです。(それも欧米のデータで、日本人の子宮頸がんのうち16,18型が原因しているのは欧米に比べて少なく,一説によると60%ぐらいとも言われています)反対に,すでにハイリスクタイプのHPVに感染してしまったとしても、16,18型ではない可能性が30%残されていますので,その時点でワクチンを接種されても子宮頸がんの予防効果がある程度は期待できるということで,日本産婦人科学会は成人女性にもワクチンの接種を推奨しています。
いずれにしても、がんになるリスクを減らすことができるようになったことは画期的なことですが、ワクチンが万能ではないことはご了解いただきたいです。そのためワクチンを接種しても成人したら定期的な子宮頸がんの検診が必要です。