子宮頸がんワクチン接種に重篤な副作用が起きてしまわれた方にこころからお見舞い申し上げます。
情報量が少なく,専門委員が調査中ですから,あくまでも現時点で知りうる情報から判断した当院の見解を述べさせていただきます。
欧米では子宮頸がん予防ワクチンによって重篤な副作用は100万人に一人しかなく,インフルエンザワクチンと同レベルか,それよりも低いとされてきました。しかし,日本では高率に副作用が起こっているので、厚労省は推薦取り消しをしました。
これにより,対象となる中高生女児はもちろん、そのご父兄、医療現場さえも大混乱しています。
推薦取り消しとは、接種は自己責任でせよと言うことで、副作用が起きたら自治体や接種した医師の責任であり、国は責任を取らないと宣言していることですし,逆にワクチンを接種しないでがんになってもそれも自己責任だと言っていることです。推薦しないならいっそのこと承認取り消しにするべきですが,その勇気もないのでしょう。ワクチン接種率は,その国の衛生状態や治安状態と並んで国際評価の対象となるからです。
オーストラリアでは2007年から、12歳から13歳の女児のほぼ全員に4価予防ワクチンの接種プログラムを開始しました。その半年前に補償も含めて全額国費負担をすると宣言しています。その結果,プログラム開始後5年で接種を受けた年代の女性はもとより,ワクチンをうっていない同年代の男性でも尖圭コンジローマの発病はほぼゼロになりました。子宮頸がんはハイリスクHPVに感染してから15年から20年でがん化しますから,まだワクチン接種の本当の効果は実証されていませんが、尖圭コンジローマの発生率からするとがんの予防効果も大いに期待できると思います。
ワクチンの使用上注意には針を上腕二頭筋に垂直に突き立てるようにさすように指示されています。これは海外のものを日本語にそのまま翻訳したものです。こんな刺し方をすれば痩せた児童では針が骨に達する可能性もあります。なぜこのようなアブナい刺し方をするのか,その理由は,海外ではおもに学校保健師や薬剤師が注射するため、失敗しないようにするためです。また,海外では医師でさえも、微妙に針先をコントロールして皮内、皮下に正確に注射することができないことがあるからとも言われています。また,座ったまま頭を高くして注射をされると,恐怖心が高まり,発作性低血圧や、自律神経反射によるショック症状を起こしやすいので,当院では当初からベッドに寝かせて、針を斜めにし刺して,皮下に薬液を注入する方法をとってきたので、注射直後にショック症状を来した症例は1例もありませんでした。
そのため、当院ではこれまで積極的に予防ワクチンを接種するようにお勧めして参りましたが,国が副作用が起きた場合の補償をするようになるまでは,ご本人からの強い希望がない限りワクチン接種を控えたいと考えています。