ヘルペス再発時の新しい治療法について

投稿日:2019年3月15日|カテゴリ:お知らせ, メディア情報, 医療情報

年間3回以上再発を繰り返す性器ヘルペスや口唇ヘルペスに対して、症状がない時に薬を処方しておいて、発病したらすぐに飲めて1日だけで終了する治療方法(PIT:Patient Initiated Therapy:患者の判断で始められる治療)が日本で初めて健康保険で承認されましたのでご紹介いたします。ただし、健康保険上いくつかの条件に合う患者様にしか適応されませんので、受診して頂いて条件が合わない場合にはご希望に添えない事もございますのでご注意ください。

クリアーするべき条件
①  年間3回以上再発をする性器ヘルペスまたは口唇ヘルペス
(初感染症状には適応になりません)
②  再発初期症状発現後6時間以内に治療を開始できる場合
(症状発現後6時間を経過している場合は通常の5日間治療になります。その場合は後日もう一度受診いただいてPIT処方になりますが、健康保険の制約上、同月内の処方は難しく、最初の処方の翌月以降に受診いただけると処方がしやすくなります。)
③  再発症状に気づいたらすぐに手持ちの薬(FMCV250mg)を4錠1回を飲み、その後6〜18時間以内にもう一度4錠を飲みます。服薬はこれで終わりですが、その後5日以上体内に薬が存在して毎日5日間飲むのと同等の効果が期待できます。しかし、3日以上経過しても症状の改善がみられないか、むしろ悪化する場合は皮膚科に受診してご相談ください。
④薬を使い終わって、症状が改善したらなるべく早く受診して、次の再発のための薬をうけとってください。
⑤従来の治療よりも抗ウイルス薬の血中濃度が高くなりますので、腎機能障害(正常の60%未満)のある方、特に透析療法中の方にはお勧めいたしません。
⑥PITは今のところ先発品だけに認可された治療方法です。FMCVのジェネリックには保険適応できるのはこれからしばらく後(2023年ごろ)になります。
⑦ PITは、待ち伏せ療法とは異なり、医学的な根拠に基づいています。その根拠を十分ご理解のうえご利用いただきたいと思います。

PITをお勧めする患者様
① 再発症状が正確に判断できる方
② 忙しくてなかなか医者にかかることが難しい方
③ 比較的再発症状が軽い方
④ 再発抑制療法を2クール以上経験されて、ほとんど症状が出なくなっている方

当院の見解
今までは症状が出てから受診して治療を受けなければならず、それを避けるには再発抑制療法するしかありませんでした。今回FMCVのPIT(患者の判断で始められる治療)が承認された事によって、今まで医者に来たくても来れずに症状を我慢してきた患者様にとって大きな朗報です。
この治療は私が常々批判してきた、症状だけを抑える待ち伏せ療法とは違い、症状の出始めに飲む事によって5日間薬を飲む従来の再発時治療と同等の効果があります。しかし、下記の方には引き続き再発抑制療法をお勧めしています。また、症状の出始めに1日服用したからといって、体内ではその後5日〜1週間ぐらい先まではFMCVが働いています。服用後1週間ぐらいは性行為を避け、ご本人も患部に触らないように気をつけて下さい。

PITよりも再発抑制療法をお勧めする方
①  年間6回以上の再発を繰り返す方
②  再発症状が強い方
③  パートナーやご家族、他人に移したくない方
④ ヘルペスによる人間関係への不安を抱えている方
④  現在から将来にかけてのヘルペス感染への不安を強く抱えている方
⑤  将来妊娠出産をご希望の方