性病に共通した特徴

投稿日:2010年6月8日|カテゴリ:基礎知識
●性病に共通した特徴
性病を引き起こす病原体には少なからず共通した特徴があります。それを理解することによって見逃さず、確実に性病を治療できるのです。言われてみれば簡単なことなので、軽視されがちですが、これを知らないと性病の診療ができないほど重要なことだと著者は考えています。
性病に共通した特徴-その① 感染力が極めて弱い病気
意外にも性病は感染力がとても弱い病気です。性行為のように密接な接触がなければ感染しませんし、しかも性器や口腔などの特定な場所でしか生きられませ んから、当たり前のはなしともいえます。感染力からすれば風邪のウィルスのほうがずっと感染力が強いといえます。感染力が弱いからこそ性行為という特殊な 感染経路を見つけて長い歴史を生きながらえてきたのです。 よく患者様から「性病の治療中はパートナーと一緒にお風呂に入ってもいいか?」ときかれますが、答えは「NO!」で す。感染力が弱い菌ですから、本当は一緒にお風呂に入ったぐらいでは簡単には移ったりしません。しかし、パートナーの気持ちからすれば一緒にお風呂に入る のはイヤでしょうね。それに一緒の風呂に入るだけですむのでしょうか。性病治療中の性行為は絶対にいけません。一緒にお風呂に入らないのはパートナーに対 するマナーの問題だとお考えください。 また、人間の体から離れるとほとんどの病原菌はすぐに死んでしまいますから下着の洗濯も熱湯消毒などもいりません。しかしウミがついた下着をほかの衣類と一緒に洗うのはやはり気持ちが悪いものでしょう。せめて下着だけは別に水洗いしてから洗濯機に入れましょう。それでも心配ならば衣類乾燥機を使ってください。そうすれば毛じらみの卵でも殺すことができます。
性病に共通した特徴-その② 感染後すぐに症状が消えてしまう
性病は、感染しても自覚症状に気づかないことが多い病気です。また、症状が出たとしても感染後すぐに症状が消えてしまいますから、患者様は「ちょっとへ んだな」と思ってもすぐに忘れてしまいます。淋病でもクラミジアでも、エイズでさえも同じような特徴があります。性病の病原体は、感染力が弱いからこそ感 染してすぐに自分の身を隠して、次の人間に感染を広げる機会を狙っているのです。 ですから 性病の治療が間違えていたり、不十分であっても、あるいは何もしなくても一応自覚症状は消えてしまうことがほとんどです。性病の治療にあたっては、このよ うな病原体の特徴を知っていないと、医師も患者様も性病を見逃してしまいます。

新宿区立の中学校での特別授業(2004年6月)で使用したスライド

性病を引き起こす病原体は感染力も弱くて人間の体から離れるとすぐに死んでしまいます。いわゆる「弱虫」なんです。でも、弱虫なりに自分の居場所を見つけ て、そして自分の身を隠す術を身に付けたからこそ人類の長い歴史とともに生きながらえることができたのです。つまり、だまし上手。私たち医師もそして患者様も性病たちにだまされないように気をつけなければなりません。