性感染症Q&A

  • このコーナーは2006年3 月1日新宿区保健所主催の講演会で寄せられたご質問に回答したものです。電話やメールでのご質問には対応いたしかねますのでご容赦ください。重複する内容 はまとめてお答えしました。当院院長の専門外のご質問に関しましてはお答えしかねるものもございますので、ご了承ください。表記はご質問用紙に書かれたも のをそのまま転記しました。一部表現を変えたところもありますができるだけ原文のまま掲載いたしました。新宿保健所ならびに講演会にご出席の皆様のご了解 の上、公開いたしました。内容の一部であっても原則的に転載は禁止いたしますが、講演会にご出席の方におかれましては、当院に電話でご一報いただければ転 載していただいて結構です。
【質問1】ヒトパ ピローマウィルスのハイリスクグループに感染しても2年間何もなかったらガンにならないと聞きましたが本当でしょうか。/ヒトパピローマウィルスの感染か らどれぐらいで子宮頸がんが発症するのですか? 子宮頸がんになったら子供を生むことはできなくなりますか?
ヒトパピローマウィルス (HPV)がどれだけの時間潜伏しているかは、本当のところはわかっていません。臨床上は3ヶ月間再発がなければ一応ウィルスの影響がなくなったとしてい ますが、再感染も含めて完全に大丈夫とはいえません。一度 HPVに感染してしまったら、特に女性では定期的な検診をお受けになることをお勧めいたします。 HPVに感染しても尖圭コンジローマを発病する人は約3%、そのうちガンになる人はさらにその3%以下・・・ですからHPVに感染してもガンになるのは 1000分の1の確率でしかありません。個人にとっては危険の確率は非常に低いのですが、100万人が感染したら1000人の人が将来ガンになる危険を 持っています。そういう意味で恐ろしい病気ですね。 ガンができるまでは感染から10年以上かかることもありますが、若い細胞ほど影響を受けやすいので10代で子宮頸がんになるケースもあります。ガンが発病 する前に細胞異型性が起こり、初期のうちであれば治療で根治します。ガンも範囲が小さければ子宮をとらずに治せるので子供を生むことは可能です。ただし、 ガンが進行してしまってはそうは行きません。早期発見するためにも定期的な婦人科検診が必要です。
【質問2】STDの治療をパートナーにもすすめる際、Dr.から説明される内容で、特に気をつけることはどんなことですか?(パー トナーに話しにくいと言う人が多いのではないかと思うので)
ま ず、STDは「性環境の汚染」であることをよく理解してもらうことです。パートナーの治療はその人のためでもあり、自分自身のためでもあります。ただし、 最初から「あなたから性病をうつされた」と言うスタンスではけんかになってしまいます。医者に行くのは犯人捜しのためではありません。あくまでも二人のた めなのです。相手を説得するときにはまず自分がSTDのことをよく理解して、愛情を持って説得することです。 STDには、感染が強く疑われていても検査して陽性に出ないことがあります。それでもパートナーに治療を受けてもらうためには病気のことをよく理解して もらわなければなりません。著者が提供するSTD情報サイト「性病事典」をぜひ 一緒にお読みになってください。 もしも自分から言いづらければ「私の主治医がパートナーを連れてくるように言っている」と説明するのもいいですね。 ただし、尖圭コンジローマ(パピローマウィルス)や性器ヘルペス(ヘルペスウィルス)などのウィルス性疾患に関しては症状が出ない限り診断は難しく、予防 的な治療方法もありませんから、「同時治療の原則」は必ずしも当てはまりません。女性の場合無症状であってもパピローマウィルスの有無を調べることは可能 ですが、健康保険適用外です。無症状の男性の場合はウィルス検査は不可能です。
【質問3】コンドームをつけたがらないパートナーに、どのようにアプローチしたらいいでしょうか。/彼氏が歌舞伎町のファッ ションヘルスによく行くのですがどんな性病の危険がありますか。
世 界的にSTD予防のためにコンドームをつけることは常識化しています。WHOも安全な性行為として推奨しています。 イギリスの中学校では女子生徒に「コンドームをつけたがらないような男はあなたを愛していない」「コンドームをつけない男にはセックスをさせない」ように と教育している学校もあります。つまり、セックスの主導権を女性側が持つ文化があるからでしょう。日本ではそこまではいっていませんが、今後女性が主導権 をとる時代になってゆくことでしょう。コンドームをするしないで愛を試されている。そう考えてみてはいかがでしょうか。 ヘルスでは「ホンバンはないから性病にかからない」と誤解している人が多いのですが、そんなことはありません。男性尿道炎、性器ヘルペス、尖圭コンジロー マ、毛じらみ、疥癬などはヘルスで感染することが多いのです。STDは確率の病気です。感染する危険性は性 行為の回数ではなくて相手の数に比例して高くなります。不特定多数との接触を持つヘルスでは、当然STDにかかる確率が高いのです。彼氏がヘルス通いをや めないようなら、ますます危険は高まってゆきます。それを許す許さないはご本人たちの問題ですが、やはり愛情が試されているのではないでしょうか。彼氏の ヘルス通いを容認するのは愛情ではなくて甘やかしでしかないでしょう。私の立場からはすぐにやめていただくようにお勧めいたします。
【質問4】STD に安全日はないのですか?
ありません。生理中は特に危険です。また、STDに限らず体調が悪いときには膀胱炎な どの感染症になりやすくなったり、セックス自体が苦痛を感じたりしますので、お互いの体調を気遣うようにしましょう。
【質問5】性感染 症は、症状が出てからどのくらいで膣内または卵管に菌が進入してしまいますか?/不妊症になる確率はどれぐらいですか/妊娠中はSTDの治療ができないと 聞きましたが本当でしょうか。
す みません。不妊症になる確率はお答えできません。STDのうちとくにクラミジアは放置しておくと子宮内膜炎、卵管閉塞や骨盤内腹膜炎などを起こして不妊症 の原因になることが知られています。しかし、長年感染している人でも妊娠できた方もいますので、必ず不妊になるというわけではなさそうです。また、クラミ ジアをはじめSTDは症状に気づかない場合が多いので、知らず知らずのうちに感染が体の中に広がってしまうのです。もしも症状が出たらすぐに婦人科などの 専門医にご相談されてください。また、症状がなくてもパートナーに感染があったら、一緒に治療されてください。その場合、感染がなくなったことを確認する まで治療することはもちろんですが、治療中の性行為もしてはいけません。 妊娠中にクラミジアや淋菌などのSTDに感染していると流産を起こしやすくなります。また、胎児に感染を起こしたり、出産のときに産道感染をしたりで、赤 ちゃんに重大な障害を起こします。妊娠中であっても積極的に治療をしなくてはいけません。妊娠中の治療については産科の主治医にご相談ください。
【質問6】カンジダについて教えてください
カ ンジダとは、カビの一種です。膣カンジダ症は女性にとっては頻度の高い病気です。カンジダ自体はSTDではありませんが、クラミジアや淋菌があるとカンジ ダになりやすいので、カンジダ症になったら一緒にSTDも調べることをお勧めします。体調が悪いとき、風邪を引いたとき、抗生物質を長期間服用したときな どにも起こることがあります。症状はヨーグルトや豆腐をかき混ぜたときののような塊を含んだ白いオリモノが特徴的です。膣の痒み、性交時の痛みなどもあり ます。カンジダを抑える薬を膣の中に挿入すると5―7日ぐらいで治りますが、繰り返し感染する場合には婦人科専門医にご相談ください。
【質問7】HIV とSTDの関係について教えてください。
STD の中で梅毒とヘルペスはHIVとの関連が高い疾患です。両者とも皮膚や粘膜に傷を作る病気なので、HIVが体内に侵入しやすくなります。反対に淋病やクラ ミジアは粘膜表面で炎症を起こす病気ですから、HIVとの関連性は梅毒・ヘルペスほど高くありません。しかし、STDは確率の病気です。病気の種類によっ て感染する危険性が異なりますが、同じ経路で感染が広がっているのですから、どんなSTDであってもHIVと無関係ではありません。 HIVの感染を持つ人と性行為があっても感染してしまうのは100~1000分の1ぐらいと考えられていますが、それは通常の性行為に限ったことであっ て、肛門性交や、道具を使った性交では粘膜面に傷ができやすいのでHIV感染のリスクが高まります。
【質問8】口唇ヘルペスは口腔内にうつらないのか。性器にはどうか。
口 唇ヘルペスは単純ヘルペスウィルス1型(HSV1)による感染症で、性器ヘルペスは2型(HSV2)によると言われてきましたが、近年オーラルセックスに よってその境目はほとんどなくなってしまいました。HSV2のほうが症状が強く出やすいので、口腔内全体に広がるような重症例のほとんどはHSV2による ものと考えられます。もちろん性器にHSV1が感染することもあります。 まだまだたくさんのご質問が寄せられておりますが、著者の専門分野として責任を持って お答えできる範囲に限らせていただきました。講演会にお越しくださった皆様に御礼申し上げます。

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