男性尿道炎の診断と治療

おしっこが痛い、ムズムズする、ウミが出る =尿道炎かも?

おしっこが・・・痛い・しみる・熱く感じる
尿道の口が・・・赤い・ただれる・塞がる
ウミが出る・下着が汚れる

こんな症状が出たら尿道炎かもしれません!!

男性尿道炎には淋菌性、クラミジア性、非淋菌非クラミジア性がありますが、正確な診断には1週間もかかります。その間の初期治療の善し悪しで治療成績が大きく左右されます。当院では年間1500人以上の尿道炎患者様の治療経験をもとに適切な初期治療に心がけています。

恥ずかしい・痛い検査が怖い・高い?

ご安心ください。健康保険取り扱いでも秘密厳守です。

「性病」は死語です。泌尿器科的感染症として科学的な治療をします。必要以上のプライバシーは聞かれませんし、無駄な検査や無駄な治療もいたしません。綿棒を尿道に突っ込むのは20年以上昔のやり方です。たとえ親に聞かれても患者様のことは通院していることさえも言いません。 当院は健康保険取り扱いで、厚生労働大臣指定の研修医教育機関ですから,できるだけ健康保険の範囲内で診療いたします。一部健康保険が使えない検査等が必要な場合は必ずご確認いたしますからご安心ください。

だらだらと不完全な治療で難治性に!
勝負はおおかた最初の1週間

経験豊富な専門医にご相談ください

効かない治療をだらだらやっているともっと薬が効かない耐性菌ができてしまいます。日本では昔の特効薬がいつまでも使われる傾向にあります。当院では大学病院の研究室との共同研究で常に最新の薬剤感受性に基づいた治療しています。尿道炎治療は最初の1週間でおおかた勝負がついてしまうので、最初から専門医にかかってください。「尿道炎治療にNG特集」はこちらからご覧ください。

尿道炎の診察で来院される場合はできるだけ排尿を長時間我慢されて(2時間程度)からこられると診察がスムーズで診断確率が上がります。のでご協力をお願いいたします。
さらに詳しい情報は「性病事典」または「講演会のお知らせ」をご覧ください。

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淋病の治療

学問的には「淋病」とは淋菌(Neisseria gonorrhoea) 感染症のことをさしますが,一般的なイメージではドロドロとした黄色い(膿性な)ウミを伴う尿道炎のことをいいます。このような症状を呈する細菌は淋菌の他にも連鎖球菌、ブドウ球菌、腸球菌、大腸菌などなどいろいろありますが,要するに細菌の発育速度が速い状態で膿性のウミを発症しますから,治療には即効性のある注射薬が必要です。

当院が資料を提供して行った「淋菌の薬剤感受性と薬剤耐性化率の研究」では、淋菌の耐性化は実にペニシリンの97.8%、ミノマイシンの91.1%に、シプロキサンの75.6%におよび、その他クラビットやジスロマックにも高い耐性化が進んでいることがわかりました。アメリカの連邦食品衛生局FDAは、薬剤耐性化が5%を超えるものは治療に不適切といっており,現在国内で使用されている飲み薬にはその基準を満たすものはありません。

そのなかで基準を満たしたのは、ロセフィン1.7%、トロビシン0.0%、ニトロフラントイン0.0%、ホスホマイシン0.0%などの注射薬でした。最近ロセフィンの耐性化が新聞報道されていますが,ロセフィンは点滴によって非常に高く血中濃度を上げられるので臨床的にはあまり問題になる率とは言えませんが,当院では5年も前にこの事実を学会報告して乱用を避けるように警鐘を鳴らしています。

淋菌と同属にあたる髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)も尿道炎を引き起こしますが,不思議なことに淋菌のような膿性分泌物ではなく,クラミジアのような漿液性分泌物を呈することが多く,治療薬もクラミジアに準じたものが有効です。

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クラミジアの治療

典型的なクラミジア性尿道炎の場合、尿道から透明〜若干白く濁った程度の水っぽい分泌物が見られます。淋病と比べると「鼻水」のようにさらさらしていることから漿液性分泌物と呼んでいます。自覚症状はほとんど気づかない程度の軽いものから、おしっこするのが怖いほど痛くてたまらないものまで様々です。感染して数日で自覚症状が消えてしまうこともあるので、感染したことに気づかない人(無症候性感染者)が半数以上に及びます。

ヒトに病原性を持つクラミジアはオウム病クラミジア(Chlamydia pusittaci)、肺炎クラミジア(C. pneumoniae)、トラコーマクラミジア(C. trachomatis)の3種類があり、細菌学的にはC. pusittaciC. pneumoniae はChlamydophila属に分類され、C. trachomatisChlamydia属に分類されます。クラミジアは、大変ユニークな細菌学的特性を持つために、分離培養が困難で、一般的な細菌と異なり感受性試験等で薬剤の効果を評価することは難しいため、しばしば見逃されたり不十分な治療によって感染が遷延化して重大な健康被害をもたらす一因になっています。

ジスロマックは、2000mgの超大量を1回だけ飲めば約90%の感染が治るとされており、海外ではほとんどの症例で使われており,日本でもよく使われるようになりました。ただし、ジスロマックは連鎖球菌や腸球菌,マイコプラズマの一部に耐性を持つものがあり,年々その割合が増えていて,海外ではジスロマック一辺倒の治療を見直す意見も出てきています。 当院ではもちろんジスロマックをご処方することもできますが、初期治療にはデータに基づき、再発率が少ない第4世代フルオロキノロンによる治療を推奨しています。 詳しくはSysmex社「STI Up to Date シリーズ第2巻 クラミジア感染症」2011年発行 または、日本臨床別冊「腎臓症候群(下)7. 感染症 7)クラミジア感染症」2012年3月出版予定に記載しています。

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性器ヘルペスの治療

疲れたとき、生理前後、寝不足、ストレスが溜まったときなどに
性器ちかくの水泡・腫れ・痛み・かゆみ
が繰り返しおこる

再発性性器ヘルペスかもしれません!!

性器ヘルペスのウイルス(HSV)は一度感染してしまうと皮膚の神経をさかのぼり、体の奥に潜んでしまい、寝不足、ストレス、飲み過ぎ、風邪、女性では生理など、体の抵抗力が下がったときに再発します。

でも、無駄に怖がらないで。

性器ヘルペスはコントロールできる病気です

最近は治療薬の進歩で、きちんと治療すれば、昔ほど怖がる病気ではなくなりました。インターネットではむやみに怖い病気としてたくさんの注意を羅列するサイトがありますが、すべての症状が万人に当てはまる訳ではなく、過度に制限的なアドバイスはかえって患者様のメンタルダメージにつながるとして、当院ではメンタルダメージを最小限にして、患者様が普通でいられるようにご指導するように心がけています。

ヘルペスは皮膚病としてではなく

神経のウイルス感染症として治療する

症状の強さに関係なく、性器ヘルペスは神経のウイルス感染症ですから、塗り薬は症状を緩和したり、皮膚の保護をするだけで、根本的な治療ではありません。内服治療が基本です。だされた薬は症状が無くなっても全部きちんと飲みましょう。次の再発のために取っておくことは、自覚症状だけをごまかすので、パートナーに移しやすくしてしまいます。

不安のない毎日を。普通でいられるために

再発抑制療法を

再発を繰り返す患者様にとって、症状が軽くても再発の不安や、他人にうつしてしまう不安から、日常生活が制限され、積極性が欠けてしまう方もいらっしゃいます。海外では社会生活や恋愛にも大きく影響をする病気として、その抑制療法は広く普及しています。 当院では治療経験を国内外の学会に論文投稿するなど、再発抑制療法の普及に寄与しています。 本療法は1年間継続して治療しなければなりませんが、治療中や治療後の症状予測も含めてきめ細かいご指導ができ、患者様が普通でいられるよう常に努力しております。

もっと詳しい情報は「性病事典」または「講演会のお知らせ」をご覧ください。

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尖圭コンジローマの治療

性器周辺にイボができたら

尖圭コンジローマかもしれません

性器周辺のイボには、尖圭コンジローマの他にも,伝染性軟属種、真珠様小丘疹、フォアダイス、毛包炎、脂肪腫、粉瘤、寄生虫、思い過ごし。。。などなど、いろいろあって判断が難しいことがありますが、専門医ならたいていの場合診断は見るだけで十分です。肉眼では区別がつかない場合はダーモスコープという特殊な器具を使って毛細血管レベルで確認しますが、これも全く痛くはありません。

尖圭コンジローマはウイルス感染症

タイプによって治療法を選択

尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症です。イボは1mm以下のものから、性器全体に広がるものまで様々で、その数や形によって治療のし方が変わります。単なるイボとしてではなく、ウイルス感染症と考えないと再発を繰り返してしまうので、当院ではウイルス免疫を作るベセルナリームをお勧めすることが多いのですが、患者様の都合によって 治療方法を選んでいます。 当院は日本有数の症例経験をもとに軽症例から重症例まであらゆる治療に対応しています。この分野の教科書の執筆も行っていて、高い評価をいただいています。

もっと詳しい情報は「性病事典」または「講演会のお知らせ」をご覧ください。

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まじめなSTD講座

STD(性感染症・いわゆる性病)とはどんな病気

STD(性感染症)とはSexually Transmitted Disease(性行為でうつる病気)の略。日本で古くからいわれてきた性病(淋病・クラミジア・梅毒)というイメージよりも、広い範囲の病気を指します。性行為でうつる可能性のある病気としては、淋病や梅毒のほかにも、今話題のクラミジアヘルペス、そしてAIDSなどがあります。これら有名な病気は誰でもSTD(性感染症)だと知っていますが、これらのほかにも伝染性単核球症、B型肝炎、尖圭コンジローマ、トリコモナス、マイコプラズマ、ウレアプラズマなどなどいっぱいあるのです。

子供によくできる水イボ、私はこれだっておとなが裸でいちゃついたときにうつればSTD(性感染症)のなかまになると思っています。

こうやって考えるとSTDは意外に身近にある病気です。STDの感染経路は、「性器を介するほどの濃密な接触」ですから、考え様によっては、STDを起こす原因菌(またはウィルス)は、非常に感染力が弱いものだといえます。また、保菌者たちはSEXができるほど元気な人たちですから、感染していても、すぐには体に大きな障害を起こさない病気だともいえます。ですから、万が一、STD(性感染症)にかかってもむやみに怖がる必要はありません。

とはいえ、AIDSのように命取りの病気や、尖圭コンジローマのように子宮がんの原因になったり、梅毒やクラミジアのように自分の子供に影響するような病気たちですから、決してなめてかかってはいけません。

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STDは何科にかかればいいの?

読者の皆さんの期待を裏切るようですが、新宿さくらクリニックは「性病科」の医院ではありません。本来「性病科」などという講座は医学部にはないのです。STD(性感染症)は、感染経路が泌尿生殖器を介するというのであって、感染症というとらえ方からすれば、内科の病気であってもおかしくはありません。事実、クラミジアはSTD(性感染症)として有名になるずっと以前からトラコーマという目の病気として世に知られていたのです。

と言うわけで原則的にはSTDを見てもらうためには、症状が出たところの専門に行けばよいわけです。女性性器なら婦人科、尿道が痛ければ泌尿器科、皮膚がかゆければ皮膚科・・・という具合に。原則はそうですが、世の中はそうそう単純ではありません。なぜ先進国といわれる国の中で日本だけクラミジア感染症が年々増加しつづけているのでしょうか。こんなに感染力が弱くて、治し方もわかっている病気がいつまでも蔓延しているのは不思議じゃあありませんか?

その理由は・・・

1.「STDなんか決められた薬を飲ませれば簡単に治っちゃう」と考えているドクターと患者さんが意外に多いこと。

痛いとか痒いとかの症状がおさまれば,ばい菌は全部いなくなったのでしょうか?もしも治療後の判定検査を怠ったり、患者が途中で治療を勝手に止めてしまうと、ばい菌が残っていて再発を繰り返したり,パートナーや他の人に移したりしてしまいます。

2.感染しても.臨床症状が出ない人のほうが多いこと。

STD(いわゆる性病)は、感染していても自覚症状が出にくく、知らない間に他人にうつしてしまう病気です。しっかりとした検査を受けなければなりません。

3.検査は100%信頼できるものではないこと。

STD(いわゆる性病)の検査は、100%信頼できるものではありません。検査をするときの状態や、検体の保存状態などに左右されます。検査は1種類だけではなくて、たくさんの種類があって、それぞれ精度がまったく違います。たとえばクラミジアの検査出よく使われる核酸増幅法にもいろいろな種類があり、制度は10倍から100倍違うことがあります。そんな検査で感染がないといわれても本当に安心できますか?診断は検査だけに頼らず、患者さんの症状や状況、尿や分泌物などの様子を見ながら総合的に判断しなければなりません。

「簡単」「早い」「安い」などの検査には注意が必要です。

4.日本では「STDは性生活をしているカップルの病気である」ことを認識がうすいこと。

パートナーも治療しなければそのうちまた感染するに決まってるのに、わざわざ注意してあげてもパートナーには黙っている人が多い。これって一種の犯罪ですよ。

【 ありがちな例 】
ある男性がクラミジア性尿道炎と診断された。パートナー(この場合彼女)は婦人科で検査を受けたが何ともないと言われた。 女性の側としては「私は潔白よ」と考えて治療したくなかった。

こんな事が起こったら女性側の主治医はどうしましょうか。私だったら、クラミジアが検出されなくっても男性といっしょに治療します。クラミジアの検出方法にはいろいろあって、どんなによい方法でも30%ぐらいは見落とす危険がありますし、検査方法によっては半分も見つけられないのですから、「検査で何ともない」のは「何ともなくない」と考えるべきではないでしょうか。

5.効かない薬でもSTDの治療薬として認可されていること。

STD(いわゆる性病)の臨床現場では細菌と治療薬の追いかけっこです。教科書で習った薬はとっくの昔に効果がなくなってしまっていることがよくあります。厚生労働省がSTD(いわゆる性病)の治療薬として認可している薬の中でも、国が決めた使いかたではもはや効かなくなってしまった薬はたくさんあります。日々臨床の現場でSTDと立ち向かっている施設でないと治療が難しくなってきています。

6.SEXパートナーが複数いることが多くなってきたのに日本ではコンドームの使用率が低いこと。

STD(いわゆる性病)に繰り返してかかる患者さんは、そうでないひとに比べるとSEXパートナーの数が多く、性行為の頻度の高いことが統計上明らかになっています。フリーセックスを煽る風潮が社会全体にあるように思いますが、それならそれで予防方法もしっかりと宣伝べきでしょうに、現実は厳しいものがあります。
当院では厚生省と東京都のSTDサーベイランス事業に参加するだけでなく、性感染症学会の

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性感染症Q&A

このコーナーは2006年3月1日新宿区保健所主催の講演会で寄せられたご質問に回答したものです。電話やメールでのご質問には対応いたしかねますのでご容赦ください。重複する内容はまとめてお答えしました。当院院長の専門外のご質問に関しましてはお答えしかねるものもございますので、ご了承ください。表記はご質問用紙に書かれたものをそのまま転記しました。一部表現を変えたところもありますができるだけ原文のまま掲載いたしました。新宿保健所ならびに講演会にご出席の皆様のご了解の上、公開いたしました。内容の一部であっても原則的に転載は禁止いたしますが、講演会にご出席の方におかれましては、当院に電話でご一報いただければ転載していただいて結構です。

【質問1】ヒトパ ピローマウィルスのハイリスクグループに感染しても2年間何もなかったらガンにならないと聞きましたが本当でしょうか。/ヒトパピローマウィルスの感染か らどれぐらいで子宮頸がんが発症するのですか? 子宮頸がんになったら子供を生むことはできなくなりますか?
ヒトパピローマウィルス(HPV)がどれだけの時間潜伏しているかは、本当のところはわかっていません。臨床上は3ヶ月間再発がなければ一応ウィルスの影響がなくなったとしていますが、再感染も含めて完全に大丈夫とはいえません。一度 HPVに感染してしまったら、特に女性では定期的な検診をお受けになることをお勧めいたします。 HPVに感染しても尖圭コンジローマを発病する人は約3%、そのうちガンになる人はさらにその3%以下・・・ですからHPVに感染してもガンになるのは1000分の1の確率でしかありません。個人にとっては危険の確率は非常に低いのですが、100万人が感染したら1000人の人が将来ガンになる危険を持っています。そういう意味で恐ろしい病気ですね。 ガンができるまでは感染から10年以上かかることもありますが、若い細胞ほど影響を受けやすいので10代で子宮頸がんになるケースもあります。ガンが発病する前に細胞異型性が起こり、初期のうちであれば治療で根治します。ガンも範囲が小さければ子宮をとらずに治せるので子供を生むことは可能です。ただし、ガンが進行してしまってはそうは行きません。早期発見するためにも定期的な婦人科検診が必要です。
【質問2】STDの治療をパートナーにもすすめる際、Dr.から説明される内容で、特に気をつけることはどんなことですか?(パー トナーに話しにくいと言う人が多いのではないかと思うので)
まず、STDは「性環境の汚染」であることをよく理解してもらうことです。パートナーの治療はその人のためでもあり、自分自身のためでもあります。ただし、最初から「あなたから性病をうつされた」と言うスタンスではけんかになってしまいます。医者に行くのは犯人捜しのためではありません。あくまでも二人のためなのです。相手を説得するときにはまず自分がSTDのことをよく理解して、愛情を持って説得することです。 STDには、感染が強く疑われていても検査して陽性に出ないことがあります。それでもパートナーに治療を受けてもらうためには病気のことをよく理解して もらわなければなりません。著者が提供するSTD情報サイト「性病事典」をぜひ 一緒にお読みになってください。 もしも自分から言いづらければ「私の主治医がパートナーを連れてくるように言っている」と説明するのもいいですね。 ただし、尖圭コンジローマ(パピローマウィルス)や性器ヘルペス(ヘルペスウィルス)などのウィルス性疾患に関しては症状が出ない限り診断は難しく、予防的な治療方法もありませんから、「同時治療の原則」は必ずしも当てはまりません。女性の場合無症状であってもパピローマウィルスの有無を調べることは可能ですが、健康保険適用外です。無症状の男性の場合はウィルス検査は不可能です。
【質問3】コンドームをつけたがらないパートナーに、どのようにアプローチしたらいいでしょうか。/彼氏が歌舞伎町のファッ ションヘルスによく行くのですがどんな性病の危険がありますか。
世界的にSTD予防のためにコンドームをつけることは常識化しています。WHOも安全な性行為として推奨しています。 イギリスの中学校では女子生徒に「コンドームをつけたがらないような男はあなたを愛していない」「コンドームをつけない男にはセックスをさせない」ようにと教育している学校もあります。つまり、セックスの主導権を女性側が持つ文化があるからでしょう。日本ではそこまではいっていませんが、今後女性が主導権をとる時代になってゆくことでしょう。コンドームをするしないで愛を試されている。そう考えてみてはいかがでしょうか。 ヘルスでは「ホンバンはないから性病にかからない」と誤解している人が多いのですが、そんなことはありません。男性尿道炎、性器ヘルペス、尖圭コンジロー マ、毛じらみ、疥癬などはヘルスで感染することが多いのです。STDは確率の病気です。感染する危険性は性 行為の回数ではなくて相手の数に比例して高くなります。不特定多数との接触を持つヘルスでは、当然STDにかかる確率が高いのです。彼氏がヘルス通いをやめないようなら、ますます危険は高まってゆきます。それを許す許さないはご本人たちの問題ですが、やはり愛情が試されているのではないでしょうか。彼氏のヘルス通いを容認するのは愛情ではなくて甘やかしでしかないでしょう。私の立場からはすぐにやめていただくようにお勧めいたします。
【質問4】STD に安全日はないのですか?
ありません。生理中は特に危険です。また、STDに限らず体調が悪いときには膀胱炎な どの感染症になりやすくなったり、セックス自体が苦痛を感じたりしますので、お互いの体調を気遣うようにしましょう。
【質問5】性感染 症は、症状が出てからどのくらいで膣内または卵管に菌が進入してしまいますか?/不妊症になる確率はどれぐらいですか/妊娠中はSTDの治療ができないと 聞きましたが本当でしょうか。
すみません。不妊症になる確率はお答えできません。STDのうちとくにクラミジアは放置しておくと子宮内膜炎、卵管閉塞や骨盤内腹膜炎などを起こして不妊症の原因になることが知られています。しかし、長年感染している人でも妊娠できた方もいますので、必ず不妊になるというわけではなさそうです。また、クラミジアをはじめSTDは症状に気づかない場合が多いので、知らず知らずのうちに感染が体の中に広がってしまうのです。もしも症状が出たらすぐに婦人科などの専門医にご相談されてください。また、症状がなくてもパートナーに感染があったら、一緒に治療されてください。その場合、感染がなくなったことを確認するまで治療することはもちろんですが、治療中の性行為もしてはいけません。 妊娠中にクラミジアや淋菌などのSTDに感染していると流産を起こしやすくなります。また、胎児に感染を起こしたり、出産のときに産道感染をしたりで、赤ちゃんに重大な障害を起こします。妊娠中であっても積極的に治療をしなくてはいけません。妊娠中の治療については産科の主治医にご相談ください。
【質問6】カンジダについて教えてください
カンジダとは、カビの一種です。膣カンジダ症は女性にとっては頻度の高い病気です。カンジダ自体はSTDではありませんが、クラミジアや淋菌があるとカンジダになりやすいので、カンジダ症になったら一緒にSTDも調べることをお勧めします。体調が悪いとき、風邪を引いたとき、抗生物質を長期間服用したときなどにも起こることがあります。症状はヨーグルトや豆腐をかき混ぜたときののような塊を含んだ白いオリモノが特徴的です。膣の痒み、性交時の痛みなどもあります。カンジダを抑える薬を膣の中に挿入すると5―7日ぐらいで治りますが、繰り返し感染する場合には婦人科専門医にご相談ください。
【質問7】HIV とSTDの関係について教えてください。
STDの中で梅毒とヘルペスはHIVとの関連が高い疾患です。両者とも皮膚や粘膜に傷を作る病気なので、HIVが体内に侵入しやすくなります。反対に淋病やクラミジアは粘膜表面で炎症を起こす病気ですから、HIVとの関連性は梅毒・ヘルペスほど高くありません。しかし、STDは確率の病気です。病気の種類によって感染する危険性が異なりますが、同じ経路で感染が広がっているのですから、どんなSTDであってもHIVと無関係ではありません。 HIVの感染を持つ人と性行為があっても感染してしまうのは100~1000分の1ぐらいと考えられていますが、それは通常の性行為に限ったことであっ て、肛門性交や、道具を使った性交では粘膜面に傷ができやすいのでHIV感染のリスクが高まります。
【質問8】口唇ヘルペスは口腔内にうつらないのか。性器にはどうか。
口唇ヘルペスは単純ヘルペスウィルス1型(HSV1)による感染症で、性器ヘルペスは2型(HSV2)によると言われてきましたが、近年オーラルセックスによってその境目はほとんどなくなってしまいました。HSV2のほうが症状が強く出やすいので、口腔内全体に広がるような重症例のほとんどはHSV2によるものと考えられます。もちろん性器にHSV1が感染することもあります。 まだまだたくさんのご質問が寄せられておりますが、著者の専門分野として責任を持って お答えできる範囲に限らせていただきました。講演会にお越しくださった皆様に御礼申し上げます。

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専門医のためのSTD講座

尖圭コンジローマ

【 ご注意 】
このページは尖圭コンジローマの治療に携わる医師専用です。記載されている内容は当院での治療方針であって、広く医学会で推奨されている事柄とは食い違う点もあります。当院に無断での引用、学会発表は固くお断りいたします。当院以外での治療結果につきましても一切責任を負いかねます。

尖圭コンジローマは、全国統計ではさほど増えていない印象を受けますが、実臨床では非常に増えていて、しかも難治性になってきつつあるという印象があります。以前よく見られた単発性のごくおとなしい尖圭コンジローマは少なくなって、ここ数年は苔状広基底性・多発性のもの(すなわち将来悪性化する危険性があるもの)が増えています。このタイプは短期間で広がり、再発もしやすいので、発見し次第積極的な治療が必要です。ヒトパピローマウィルス(HPV)のタイプ分類は、健康保険が使えません。また予後判定には組織型のほうが有用ですから、患者の強い求めがない限りやりません。

ベセルナクリームの適応

2008年版日本性感染症学会編「性感染症の診断と治療ガイドライン」に、尖圭コンジローマ治療のファーストラインにベセルナCrが推奨されました。当院では疣贅の個数がおおむね4個以上の場合、イボが小さくて数が少なくても、広範囲に散在性に分布していたり、将来の再発が心配な場合はベセルナCrの適応としています。ただし、患者様のご希望をなるべく優先するようにいたします。

そのほかの治療

(1)単発性~数ヶ所の場合

液体窒素による凝固で十分なこともありますが、局麻して水イボ鉗子で切除したほうが再発しづらい印象があります。このとき、周辺組織も含めて真皮まで切除するのがコツです。直径5mm以上のものでしたら、周辺にウィルス外残している可能性がありますので切除面周辺に電器メスかCO2レーザーを照射しておきます。

(2)陰茎軸部の多発性・広基底性腫瘍の場合

液体窒素では完治させることは難しいので、速やかに切除術を行います。この際、陰茎軸部であれば皮下に達するように切除します。ループ型電メスが使いやすいです。病変部が大きければメスで切除します。割線が陰茎軸に対して横向きになるようにして、術後の包皮狭窄を予防します。

(3)亀頭部腫瘍の場合

これも基本的には手術療法を行いますが、液体窒素は病変部を小さくすることを期待して使います。亀頭部は皮膚が薄く、直下に血管組織が迫っていますので、陰茎軸部のように深く切り込むことが出来ません。そのため少しでも手術の範囲を小さくしておく必要があるからです。この場所にはCO2レーザーもよく使います。 いずれの方法も再発しやすいので、患者さんとよくコミニュケーションをとって、最後まであきらめないでいっしょに治療に取り組む姿勢が必要です。

外尿道口腫瘍の場合

女性のHPV好発感染部位として子宮頚管部がありますが、そのような場合には性交によって外尿道口は最もHPVに暴露されやすいと考えられます。事実、最近外尿道口腫瘍の症例が増えています。術者は左手の親指と人差し指で患者の外尿道口を左右に広げ、右手で6時方向をめくるようにすると、尿道口から7-8mmぐらい奥まで観察できます。腫瘍の端がこれより先端にあれば水イボ鉗子で切除して周囲をレーザーで焼灼します。

腫瘍断端がそれより奥にある場合には、小さい摂氏を尿道に入れて観察します。だいたいは梨状窩前半ぐらいまでです。梨状窩に腫瘍がある場合、内視鏡は入り口に近すぎるため保持が難しく、術者泣かせです。当院では独自に外尿道口を切開して視野を確保して根治的に切除し、外尿道口を形成、修復する手術を開発いたしました。再発率等の手術成績に関しましては、症例数を集めて学会報告したいと存じます。

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