2008年度STD臨床統計

当院の2008年STD(STI)臨床統計を公開いたします。昨 年も多くの患者様が受診されました2008年は2007年に比べてクラミジアと淋菌の数が減って、尖圭コンジローマが増えたため、ほぼ前年と同じか、若干 多くなりました。下記に各疾患ごとのコメントを載せます。あくまでも当院の統計ですので全国統計とは傾向が異なります。

2008年臨床統計 男性 女性 合計
STI関連患者数 2236 1437 314 201 2550 1638
平均年齢 34.5 33.9 26.7 27.1
クラミジア感染症 263 195 42 30 305 225
淋菌感染症 255 175 37 28 297 203
非淋菌・非クラミジア感染症 885 473 218 129 1103 602
性器ヘルペス 200 177 40 34 240 211
尖圭コンジローマ 282 222 38 29 320 251
トリコモナス症 1 1 2 2 3 3
梅毒 30 23 2 2 32 25

上段は2008年診断総数です。下段(青文字)は、新患数です。2007年統計と比較するときは新患数をご参照ください。

各疾患の傾向

クラミジア感染症と淋菌感染症

クラミジアと淋菌は前年比20%マイナスでした。クラミジアと淋菌は全国的にも2003年以降減る傾向にありますが、これらの疾患が本当に減っているか どうかは疑問が残ります。インターネットで検査キットを手に入れて検査する方が増えていますので医療機関に受診しない患者様が増えたことが主な原因だと考 えています。また、当院では2006年から2007年にかけて順天堂大学医学部感染制御科のご協力の下、非常に精度の高い検査をおこなっていたために、こ の間の陽性率がよくなっていました。2008年は非淋菌非クラミジア感染症が23%プラスでしたから、クラミジアと淋菌のマイナス分とほぼ同等でした。つまり、今回のマイナスは検査精度による変化であって、決してクラミジアと淋菌が減っているとは考えていません。どんなに一流の検査センターでも、検査データの精度は、どうしても大学の研究室にはかないません。日ごろは研究室レベルの精度では検査ができませんので、上記研究成果をもとに、当院独自の診断と治療のアルゴリズムを開発し、2008年に本泌尿器科学会総会で発表いたしました。この研究成果を診療に役立てて、治療精度の向上に努めています。

性器ヘルペス

性器ヘルペスは前年比14%マイナスです。2006年9月に性器ヘルペス再発抑制療法が健康保険の適応になり、新聞雑誌に取り上げられたために一時期患者様が集中しました。2008年は少し落ち着いたといってよいでしょう。 とはいえ、2006年に比べると1.5倍ですので、新規治療の影響で潜在的な患者様が受診されるようになった結果だと思います。

尖圭コンジローマ

2007年12月に パピローマウイルスに対する免疫賦活剤・ベセルナクリームが発売され、今まで手術や液体窒素で治療してきたものが、塗り薬で治療できるようになりました。その影響で尖圭コンジローマは前年比40%プラスと、大きく増加しました。他の施設に先駆けてベセルナクリームを導入し、安全性と有効性を両立させた使用方法を 開発して学会発表、講演会をおこなうなどが評価された結果、当院での治療を希望される患者様が多くこられた結果と思います。中には新幹線を使って遠方から 通院されている患者様もおられます。本来地元で受けられるべき治療ですので、地域による診療技術のギャップを埋めるために今年に入って4ヶ月で6回の講演 会をおこなってまいりました。

梅毒

梅毒もほぼ前年並みです。東京都への報告数の約半分を当院が報告しています。梅毒を疑って検査すれば診断がつきますから多くの場合、検査されずに 見逃されているのだと、残念に思います。日本では梅毒は「過去の病気」と考えられがちですが、いまだに新生児の先天梅毒が、先天風疹よりも上回っており、妊婦への検査の徹底が必要だと感じています。