尖圭コンジローマ診断の実際

投稿日:2012年1月8日|カテゴリ:尖圭コンジローマ

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尖圭コンジローマ診断の実際

2012年1月18日更新
この記事は著者が担当した2011年日本性感染症学会関東甲信越支部総会ならびに皮膚科フォーラムにおける学術講演「尖圭コンジローマ治療の今昔」の内容から抜粋して一般の方向けにわかりやすく書き直したものです。なお、著者の許可なく記事や画像の一部または全部を転載、引用することを禁止いたします。医療機関様で日常診療にお役立ていただけると幸いです。なお、著者の許可なく書籍、インターネット、論文ほかに記事や画像の一部または全部を転載、引用、公開を禁止いたします。

 

尖圭コンジローマの画像と診断

残念ながら尖圭コンジローマの診断には有効な検査方法がないというのが実情です。診断は患部を視診、触診して行います。典型的な場合には一目でみればすぐに分かりますが、微小病変の鑑別には専門的な知識が必要です。 尖圭コンジローマにはいろいろなタイプがあって、一口に表現することは出来ません。それに、タイプに合わせて最適な治療方法を選択しなければなりませんから、「なぜ、そういうタイプになったのか」ということを考えないと治療がうまくいかないこともあります。著者は、今まで教科書に語られてこなかった「ウイルスの分布」に着目して解説しています(下図)。また、治療効果の判断や再発の判断に役立つ微小病変の鑑別方法も解説しました。

尖圭コンジローマ 新宿さくらクリニック

図 塊状尖圭コンジローマ(画像)

塊状・鶏冠状の尖圭コンジローマ。傷面から大量のウイルスが侵入したため、短時間で大きな腫瘍に進展するが、ウイルスが限局しているので冷凍凝固や外科的切除でも比較的再発率が低い。


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図 線状の尖圭コンジローマ


塊状・線状の尖圭コンジローマ。包皮反転部は皮膚が損傷しやすく、皮膚のしわに沿ってウイルスが感染しやすい

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図 散在性の尖圭コンジローマ


散在性の尖圭コンジローマ。ゴマ粒大〜米粒大の小さな腫瘍が広範囲に分布している。ウイルスの感染範囲が広いので、正常皮膚にもウイルスが存在している可能性が高い。外科的治療や冷凍凝固では再発率が高いので、ベセルナクリームの免疫賦活療法が望ましい。


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図 苔状尖圭コンジローマ

 亀頭環状溝は皮下組織が薄くて固いので腫瘍が縦に成長しにくく、横に成長しやすいため、白斑状や、苔状になることがある。また、冷凍凝固やレーザー照射等のあとにこのような形で再発することも多い。ウイルスの分布が広く、治りづらいタイプ。ベセルナクリームの免疫賦活療法が望ましい。


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図 びまん性尖圭コンジローマ

 亀頭部も皮下組織が薄くて横に広がりやすいため、時として広基底性・びまん性のタイプがみられる。このタイプは「湿疹」「カンジダ症」などと誤診され、ステロイド軟膏を使用されると悪化する。以前は非常に治療困難な病態だったが、腫瘍体積が小さくて表面積が広いので外用薬の好適応である。ベセルナクリームの免疫賦活療法がよく効く。

 

● 微小病変の鑑別とパピローマ単位

尖圭コンジローマを拡大していくと、イボの表面にコイル状の毛細血管をみることが出来ます。これは霜柱状に下からのびてきたパピローマ単位1個1個に毛細血管が、表面で電球のフィラメントのように折り返す様子を上から見た状態です。周囲の正常皮膚の毛細血管とは明らかに走行が異なります。表面の角質層が厚いと、コイル状毛細血管を観察することが出来ませんが、これがあればほぼ100%尖圭コンジローマに間違いありません。(下図)


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図 微小病変とパピローマ単位

 

● 微小病変の見分け方

尖圭コンジローマと鑑別しなければならない微小病変は、真珠様小丘疹、伝染性軟属腫(水いぼ)、ボーエン病、ほくろなどがあります。それぞれ形態的特徴があるので専門医が診れば診断は簡単です。尖圭コンジローマの場合、輪郭が不整形で、大きさが不規則、イボの表面がでこぼこ(顆粒状)です。コイル状の毛細血管があれば診断は確実です

 


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図 微小病変の見分け方

 

尖圭コンジローマになった時のパートナーの取り扱い

尖圭コンジローマはヒトパピローマウィルス(HPV)が粘膜や皮膚の細胞を異常に増殖させて起こる良性腫瘍ですから、ほかのウィルス感染症と同じようにウィルス(または坑ウィルス抗体)を証明できれば感染の診断ができるはずです。しかし、ヒトパピローマウィルスは粘膜細胞や皮膚基底細胞といった場所にあるので、体の免疫細胞に認識されにくく、血中抗体でウィルスの存在を調べることが難しいのです。

また、ウィルスが感染しても尖圭コンジローマを発病するのは約3%のひとで、大多数のひとはウイルスに感染しても発病しません。女性では子宮頚管部の粘膜をスポンジでこすって細胞を採取してウィルスを調べることが可能ですが、男性では皮膚の表面をいくらこすってもウィルスを捕まえることができず、無症状のひとを検査することは、事実上不可能です。

淋病やクラミジアでは感染後約半数のひとが発病に気づきます。しかしパピローマウィルスに感染しても尖圭コンジローマを発病するのはほんの少数です。性病はパートナーとの同時治療が原則ですが、尖圭コンジローマに関しては発病していないひとの治療はできませんので、パートナーをお連れいただいても男性では肉眼で尖圭コンジローマローマの有無を確認することぐらいしかできません。

一方、女性では発病していなくてもウィルスの検査が可能ですが、健康保険が 適用されない検査で、事前準備も必要ですので、あらかじめ医療機関に検査が可能かどうかということと、料金がいくらぐらいかかるかということをを問 い合わせてください。ウイルスに感染していない場合なら、子宮頸がんや尖圭コンジローマの予防ワクチン接種をお勧めいたします。

とはいえ何もしないでただ怖がっていても始まりません。何も症状がなくても男性なら泌尿器科を、女性なら婦人科を受診されることをお勧めいたします。また、尖圭 コンジローマは免疫力が低下すると発病しやすいので、発病の予防には日ごろから体調管理が重要です。

ウィルス感染が明らかになった場合は(特にハイリスクタイプの場合は)、性行為のときにできるだけコンドームを使うように心がけ、無症状でも定期的(最低でも1年おき)に検診を受けていただくようお勧めいたします。

 

 

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