淋病の検査方法

投稿日:2010年6月8日|カテゴリ:淋病とクラミジア感染症

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2012年1月18日
更新
淋病の検査には 嫌気性培養、PCR法などがありますが、それぞれ一長一短があります。それぞれを知った上で検査方法を選ばなければなしませんが、著者は時間も費用もほとんどかからない顕微鏡検査が最も重要だと考えています。

嫌気性培養

淋菌は発育するために酸素が少なくて二酸化炭素(炭酸ガス)の濃度が10〜15%ほどの環境を好みます。また、繁殖させるためには特殊な(サイヤー・ マーチン培地など)環境が必要です。淋菌は死滅しやすいので、患者様から取った試料は急いで培地に植えつけて酸素を除去して二酸化炭素を与え、37℃で培 養します。病院で試料を取っても、培養処理するまでに時間がかかってしまってはいい結果は得られません。
 手間とコストがかかる割には保険点数で認められないこともあるので、あまり一般にはやりません。一般的には次に述べるPCR法が行われていますが、 PCR法は口腔咽頭のナイセリア属と淋菌を区別できないために咽頭の検査には嫌気性培養を行います。

遺伝子増幅法(PCR法)  

細菌の遺伝子の一部分をコピーして増やすことによって検出感度を上げる方法です。PCR法は非常に感度が高く、BSE(狂牛病)のウィルス検査にも使わ れています。検体を取ることも簡単ですから、郵送の検査キットなどにも使われています。女性の膣分泌物中に含まれる物質もPCR法の感度を悪くしてしまい ます。特に生理中の出血に含まれる血液中の遺伝子が検査を邪魔してしまいます。

 

  PCR法は非常に感度がいい反面、大きな施設が必要で、検査する技師の技術などに高いレベルが要求されます。検査結果は陽性か陰性と判定されますが、 その間にグレイゾーンといって、判定できない部分があります。1回目の検査でグレイゾーンに入ったら、再検査でさらに厳しい判定基準でどちらか決めていま す。

淋菌の検査方法(最新は最良か?)

淋菌を見つけるための検査にPCR法という検査方法があります。この検査は淋菌のDNAの一部をコピーして増やすことによって検出感度を上げる仕組みです。しかし、淋菌に特徴的なDNAをコピーしたつもりでも、実は仲間のナイセリア属のDNAだったということが あります。ナイセリア属は主に口やのどに寄生していますから、のどの検査の場合はPCR法を使うことができません。の どで淋菌をPCR法で調べると70%以上で陽性に出てしまいます。そのほとんどが無毒のナイセリア属だったことがわかって、約2年前にPCR法の検査基準 を見直さなければならなくなりました。このとき検査キットの製造元である(株)日本ロッシュと担当者の皆様は誠実かつ迅速に対応され、企業の社会的責任を 十分に果たしたことに著者は心から感動いたしました。

最近ではPCR
の欠点をおぎなうように、ナイセリア属の偽陽性が出にくいSDA法が開発されましたので、咽頭の淋菌検査にはSDA法を使っています。この方法は淋菌とクラミジアも同時に測定できるので便利ですが,男性では健康保険の適応が通っていません。また、咽頭の性感染症はまだ一般的に認識が広まっていませんから,健康保険で査定されてしまうことがありますので,原則的に自費扱いになります。

淋菌を確実に見つけ出すには嫌気性培養法がいいのですが、この検査は病原菌を取り出してすぐに適切な処理をしないと淋菌が死んでしまうために、通常の医療機関では実施が難しい検査方法です。

それでは淋菌を見つけるのは難しいのか、というとそうではありません。顕微鏡さえあれば淋菌は意外と簡単に見つけることができます。 ナイセリア博士の時代とたいして変わりありませんから、細菌学の基本は150年前とちっとも変わらないといったらいいすぎでしょうか。患者様の分泌物をスライドガラスにスタンプするようにして押し付けて、メチレンブルーという染色液で染色をして顕微鏡で見たのが下の写真です。()

 

スライドグラスにつけた分泌物
光学顕微鏡100倍で観察すると、白血球同士がくっついて、重なり合うようにしている。この倍率でもよく見ると淋菌がわかる。

油浸1000倍で観察。白血球に取り込まれた淋菌と、freeな淋菌が見える。淋菌はコーヒー豆を二つ重ねたような特徴的な形(双球菌)をしている。
この写真はたびたびテレビで放映されたり、医学部や看護学の教科書にも掲載されているので目にされた方もあるかもしれませんが、著者が撮影したものですから引用される場合は必ず著者の許可を得てください。

最近ではオラルセックスの広がりで尿道からも淋菌によく似たナイセリア属が見つかるようになってきましたから、淋菌のPCR検査よりも、顕微鏡検査の重要 性が復活してきつつあります。何よりも顕微鏡検査はその場で結果がわかるし安いので、今後も淋菌の診断にはなくてはならないですね。性病科を受診したときに診察室に顕微鏡があるかないかは、重要なチェックポイントになります。