淋病とクラミジアが合併するときの治療方針

投稿日:2010年6月8日|カテゴリ:専門医向け記事

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2012年1月20日更新
淋病とクラミジアが合併する確率は約40%といわれています。著者の過去13年間にわたる診療経験でも同じような割合で合併していますが、2005年の 集計では淋菌196例、クラミジア222例、淋菌とクラミジアの合併33例で、おのおの15%ほどで、過去のデータより少なめでした。この統計では過去に尿道炎で通院したことのある症例を除いていますので一度に淋菌とクラミジアの両方に感染する方は、繰り返し感染することが多いためにデータの取り方で少なくなったことがその理由です。
 少ないとはいえ、15%はやはり高い割合だと考えています。

男性尿道炎の起因菌・2005年新宿さくらクリニック集計。

 淋病とクラミジアを合併する場合、ウミの色が白くて少し黄色身がかった程度です。淋病ほドロドロではなくて、かといってクラミジアほどサラサラでもあり ません。ちょうど淋病とクラミジアの中間のようなウミという表現がぴったりです。長年尿道炎を見ていると、ウミを見ただけでおおよその原因がわかりますの で、初診時から次に書くような治療計画を立てます。
 

淋菌とクラミジアが合併するときの治療方針

●治療の順番は淋病>クラミジア
 淋菌とクラミジアが合併する場合、まず淋菌の治療を優先します。淋菌は発育が早いので、発見したらすぐに大量の抗生物質を使って短期間のうちに殲滅しな ければなりません。逆にクラミジアは検査が出るまでに時間がかかる(約5日〜1週間)ことと、比較的発育が遅いので淋病治療ほどは先を急ぐ必要性が薄いか らです。症状も淋病のほうが激しく、クラミジアのほうがおとなしいので、淋病の治療を優先したほうが患者様の自覚症状も早く取れます。

  とはいえクラミジアも何日も待っていてはくれませんから、淋病の治療がすんだら速やかにクラミジアの治療に移らなければなりません。自覚症状が消えると通 院しなくなるのは患者心理ですから、初診時によほどよく説明してしっかり通院するように理解してもらう必要があります。

 下記はクラミジアと淋病が合併したときの当院の治療計画例です。ほんの一例にしか過ぎません。推奨されるガイドラインとは多少異なりますが、治療効果、再発率抑制に優れています。

淋病とクラミジアが合併した場合の治療計画(例)
初診日 リズピオン筋注 オーグメンチン4錠X5〜7日処方*
翌日 トロビシン筋注**
再診(5−7日目) クラミジア感染を確認のうえガチフロ(100mg)4錠X7日処方***
再診(2週間目) クラリス(200mg)2錠X7日
再診(3週目) 治療効果確認→4週目に最終チェック***
* リズピオンとオーグメンチンは淋菌のみならず黄色ブドウ球菌や大腸菌に優れた効果があり、しかも安価であるため初診時に併用すると効果が期待できます。

 

** ガチフロは尿糖のあるひと、重い肝・腎機能障害があるひとを除けば比較的安全に使える薬で、今のところクラミジアに対する効果はクラリスよりも優れています。この薬によって治療成績が飛躍的に向上しました。

*** 投薬をやめて1週間ほどしてから最終チェックをすると約1%(以前は約5%でした)程度で尿道分泌物にぶり返しがみられます。ご本人はほとんど無症状ですから、このまま放って置くと他人に移したり、前立腺炎などの治しづらい病気に発展します。

 

 上記の治療計画はほんの一例にしか過ぎません。治療効果を最優先で考えて試行錯誤した結果こうなりましたので、地域によっては健康保険の適応が難しいことも予想されます。臨床医の方には基本的には日本性感染症学会のガイドラインを遵守することをお勧めいたします。